2023年11月28日火曜日

不愉快な包丁屋

とある理由で、私は本格的な和包丁を持っています。

何十年も前に購入した、和食の板前さんなら必ず一本は持っている細身で刃渡りが長い柳刃という包丁です。

先日、ひょんなことから我が家の台所の奥の方にしまってあったのを見つけ出しました。

多少さびはあるものの、形はほぼ以前のままで、少し研げばまた元の様に使えそうでした。

実は若き一時期の思い出の詰まった品で、このまま放っておくのも勿体なく、一度専門家に出して研いでもらい、その包丁に生き返ってもらおうと思い立ちました。


ネットでいくつか包丁研ぎの専門店を探し出し、一番良さそうな先へ電話を掛けてみたところ、その包丁なら販売元に直接持ち込んだ方が良いとアドバイス受けました。

その販売元のホームページを見てみると、たしかにそこに包丁の修理という項目があり、研ぎや修理、柄交換などを行なうと書かれていました。

包丁の種類で修理の価格が分かれており、業務用の和包丁は1500円~3500円となっていました。

事前に電話を掛け、訪問の意を告げると、開店時間内に包丁を持ち込めば、修理を受付けていて、一般的な研ぎであれば一週間ほどで終えられるとの事でした。


数日後、その販売元に包丁を持って行くことに。

下車した駅から少し歩き、店の前に来ると、そこは最初から営業する気がないのか、昼間にもかかわらず、入口の二つあるシャッターの片方は閉まっていました。

うす暗い店に入り、接客を終えた従業員らしき年配の人をつかまえ、研いで欲しいと言って包丁を出して見せると、一目で30年くらい前のものだなと言われ、よくそんなことが分かるものだと感心しました。

研ぎの金額を尋ねると、3,500円前後との返答で、一週間かかるというのは事前の案内通りでしたので、お願いすることに。

「どちらの誰さん?」と聞かれたので、自宅の最寄りの駅名と苗字を言うと、私の包丁の刃の部分に紫のマジックでそれを書き、受取り伝票などなく、受付けはそれで終了。

本来なら、勤める店の名とその店での自分の呼び名を伝えることが信用情報になるのでしょうか。

刃に書いた名前は包丁を研ぐと消えてしまうので、それは別に良かったのですが、他の人のものとは間違えるなよとは思いました。

その近所には、鮮魚の小売店があったので、研ぎが終わった包丁を受け取りに来た日には、マグロか何かを買って、久しぶりに刺身盛り合わせでも作ろうと心に決め、その日は帰ることに。


一週間が経ち、包丁を受け取るためにふたたびその店を訪れることに。

駅から包丁店まで間、研ぎ賃は実際いくらくらいになるだろうかなどと考えながら歩いていました。

前回訪問時、3,500円前後と言われましたが、ホームページでは1500円~3500円となっていたので、実は少し高めに見積もられていて、研ぎだけなら少し安くなるのではないかと予想していました。

他の研ぎ屋さんのサイトを見ても主に1,000円からと書かれたものが多く、3,000円を超える価格提示はなかったからです。

ところが、店に到着すると、少し若めの店員さんが処理を終えた包丁を出してきて、4,000円だと言われてしまいました。

ちょっと驚き、なぜそんなにするのかと尋ねると、古い包丁だから、刃が曲がっていたからなどといくつかの理由を言い始めます。

きっとその彼も、実際に処理を行った作業員さんが直感でつけた価格の理由など分かっていなかったのではないかと疑ってしまいました。

彼には交渉によって価格変更を行う権限もなさそうで、頑なに払ってくださいと言うばかり。

消費税込みの4,000円って、税前は3636.363636・・円という事でしょうか。

たかだか500円ほどの差と思われるかも知れませんが、そこは気分の問題です。

もし初期提示より価格が上がるなら、その内容を事前に客に伝え了解を取るべきではないかと、そのどんぶり勘定的な価格設定が私には納得できませんでした。

研いだ包丁を受け取った日は、魚を買って家で刺身を作るつもりでしたが、そんな気分も吹き飛んでしまい、サッと電車に乗って帰ってしまいました。

後日、知り合いの板前さんに柳刃包丁を研ぎに出したら4,000円も取られたよと話したところ、その彼はそんなに高いのなら相当切れる様になったんじゃないのと笑われてしまいました。


今回は、こちらの勝手な期待と実質とのギャップが不愉快を呼んだ原因でした。

自身の商売でも、お客様に高い期待を抱かせて、それとは異なる商品やサービスを提供することがない様にと、固く心に刻んだ次第です。

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