朝早い時間帯の地下鉄で客先に向かっている時のことでした。
ホームで電車を待っている私から少し離れたところに、細めのピッタリとしたブラックジーンを履いたスタイルの良い女性が立っていました。
遠目から顔を覗くと、マスクから出た上半分が何十年か前に何度か一緒に出かけたことのある女の子にとてもよく似ていて、驚きました。
電車が駅に到着すると、乗客はまばらにしかいない車中に乗り込み、座ったその女性の斜め前に私も席をとりました。
怪しく思われない程度にその顔をチラ見していると、当時のことを思い出してしまいました。
西海岸のベイエリアと呼ばれるメトロポリタンエリアの一つ。
その一部に国際都市でありながら、人口70万人程の小さな街に私は住んでいました。
当時、日本人女子がアメリカ人男子にえらくモテるのに比べ、言葉もあまりうまく通じず、そんなに背も高くない東洋人の男の子はほとんど女子に相手にされず、デートなど遠い夢の話でした。
それでも、滞在が2年を過ぎた頃、私にもようやくチャンスがめぐってきました。
数回でしたが、一緒に食事をし、映画も見に行きました。
しかし、最初のデートでは、日本で育った男の子としては、文化や生活習慣のギャップに後から思い出すと恥ずかしいことばかり。
友人から借りた車で家まで迎えに行った際、一度車を降り助手席の扉を開け、先に女性を乗せてから車を発進させるなど、その頃は考えも及びません。
テーブルマナーの習得も不十分なままレストランに行き、メニューを広げても、まだ若い時分の私にはどの順番で何を頼んで良いのかさえ分からず、困ったりしたものでした。
食後に通りを散歩しながらつなごうとした手は、それを予測してか、サッとポケットの中に隠れてしまいました。
昔の思い出に浸っている内に、斜め前に座っていた彼女は私より先に電車から降りて行ってしまいました。
仕事に行く途中のほんの短い、早起きへのご褒美のような時間でした。
2020年12月5日土曜日
昔の彼女によく似た彼女
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