これは先週末、福岡の百貨店でクロコスニーカーのオーダー会を開催し、東京へ帰って来る際のお話です。
そうなると、出張用の衣類等や元々持ち帰る予定だった商品とお客様の靴、それに自分のブリーフケースを合わせると、合計三つのバッグをハンドキャリーすることになりました。
その時は、それくらい大したことではないという思いでいました。
そして帰京の日、東京へのフライトの出発時刻は午前10時だったのですが、空港へ行く道筋、朝の通勤ラッシュが私を待っていたのです。
福岡は街の中心から空港が近く、天神から福岡空港まで地下鉄で20分とかからずに行けてしまいます。
余談ですが、空港が近いことで、福岡の都心では背の高いビルが建てられないと言います。
さて、その朝もいつもの感覚のまま楽勝気分でいたところ、三つの荷物とラッシュ時の混雑で、移動が難しくなってしまいました。
ブリーフケース以外の二つのバッグは柔らかい樹脂製のボストンで、押されるとつぶれます。
商品とお客様からお預かりした修理品を押しつぶされる訳にはいきません。
福岡とはいえ、中心街の天神での混雑は都心と変わりません。
電車の扉が閉まる時には、なんとか乗り込もうと最後の乗車客が背中を向け、お尻でグイグイ押しながら乗車していきます。
仕方がないので、ひとつ電車を乗り過ごし、ホームの電車待ち最前列に並び、降車客が出てしまった直後に電車に飛び乗り、網棚に二つのボストンを載せることにしました。
何とかうまく乗車できたのですが、次の駅の中洲川端では多くの人が降り、三つめの博多ではなんと乗車客はほぼいなくなりました。
その後、ようやく空港に到着したのですが、よくよく思い出すと機内への持ち込み手荷物は二つまで。
知らん顔して三つ持ち込むことも考えましたが、乗務員さんに指摘されて問題になるのも恥ずかしいので、地上係員さんにお尋ねしたところ、カウンターで相談してくださいとのことでした。
日本のエアラインさんは親切です。
カウンターに行き、事情を説明したところ、荷物に上積み禁止のタグを付けるか、荷物自体をプラスチックケースに入れて輸送するかという選択をいただきました。
迷わずケースに入れてくださいとお願いし、ボストンを一つチェックインし、プラケースに入れてもらいました。
これでブリーフケースとボストン一つになったのですが、そのボストンにも商品を入れてあり、たとえ機内に持ち込んでも、荷物入れの中で他の固いスーツケースにつぶされては堪りません。
機内に乗り込み、ブリーフケースを抱えていると、当然のことながらフライトアテンドさんから荷物を頭上の棚に入れてくださいと注意を受けます。
大事なものなので、他の荷物につぶされたくないという旨を伝えたところ、「荷物入れの中に他の荷物がなければいいのですね。」と聞かれたので、「そうです。」とお応えしました。
すると彼女は私の頭上の荷物入れの扉を開き、荷物を一つづつ取り出して、「こちらはどなたのものですか?」と周りの乗客に大声で尋ね始めたのです。
「私のものです。」と応えた方に、「こちらに移してもよろしいですか?」と了解をとり、他の空いたスペースに荷物を次々と移していきます。
そこにあった荷物がなくなるまでその活動は続き、空になった荷物入れにボストン一つだけを収め、フライトアテンドさんは「ありがとうございました。」と私に告げ、通常業務に戻られました。
ほんの数分の出来事で、こちらとしては大変有難いのですが、恥ずかしさがそれを少し上回り、そこからしばらくは赤面の思いで座席にじっと座ることになりました。
本来、一人の乗客のためにここまでしてくれるのかと、不思議な思いでもありました。
「まさか私に気があったりして?」と一度は考え、機内のトイレに行って鏡と相談したところ、答えは「調子に乗るな!」でした。
国内線では荷物を預ける乗客も少ないからか、フライト到着後のバゲッジエリアでは、そんなに時間もかからずにベルトコンベアーからブルーのプラケースが出てきました。
更に親切なことに、地上係員さんがベルト上の荷物を追いかけながら私の名前を発していました。
私ですとお答えしたところ、プラケースをベルトコンベアーから下ろし、開けてもよろしいですかと尋ね、受け取っていたタグと引き換えに荷物を渡していただきました。
なんと親切な方々だったことでしょうか。
しかし、プラケースは結構なサイズでしたので、これなら最初からボストンバッグを二つとも入れてしまえば良かったのにと、あとから思うのでした。
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