時々私は百貨店で行われるイベントなどで、販売応援という立場で紳士靴売り場に立たせてもらっています。
これは先日百貨店で私どものオーダー会が開催された時のお話です。
20歳代とおぼしき若い男性が私の前に現れ、「マスクが欲しいんですけど、どこで手に入りますか?」と聞いてきました。
現在は、どの百貨店でも入店されるすべてのお客様にマスクの着用をお願いしていますが、その男性はマスクをしていなかったのです。
しかし、百貨店の紳士靴売り場に来て、マスクの入手について聞かれても、通常その用意はありません。
もし私なら、まず一旦外に出て、薬局を探します。
しかもその男性は前のめりにツバキを飛ばさんくらいの勢いで話しかけてくるので、そのことが他者に与える影響よりも、自身のマスクの有無がより優先事項だったのでしょう。
どの様にご案内すれば良いか困っている私を見かねた近くの女性販売員さんが「こちらにどうぞ」と言って、その男性を売り場の奥に案内されて行きました。
しばらくすると、その男性は手にしたマスクの包装フィルムをはがしながら、私の目の前を通り過ぎ、マスクを着けて立ち去りました。
結局、靴売り場に用はなかったのです。
のちに助け船を出してくれたその女性販売員さんにお礼を言いに行き、どの様な対応をされたのかをお尋ねしました。
その女性販売員さんによると、売り場の奥のカウンターに医療従事者さん向けの募金箱があり、募金をいただいた方にマスクをお渡ししているとのことでした。
先ほどのお客様に、「100円でも50円でも良いので募金をいただければマスクを差し上げます。」とお伝えしたところ、その男性は募金箱に1円を入れてマスクを持っていかれたそうです。
その男性にとって、まずはマスクの入手が重要だったとは思います。
しかし、医療従事者さん達に感謝の意を表わす募金に最低金額の1円は、私には理解できませんでした。
その日のその後に、その男性が何かを購入したり、食事をされたりするのであれば、その1回を諦めてでも医療従事者さんに敬意を払って欲しかったと思ったのです。
他の募金であれば、私はそこまで言いません。
新型コロナウィルスの感染が広がり、医療従事者さんたちの受け取る報酬に見合わない過酷な労働や、自らを感染の危険にさらすリスクへの恐怖、更には風評被害からの差別による心的疲労。
一般の人には想像しづらい内容です。
そこに1円はないでしょう。
しかし、ここで「ハッ」と気付きました。
人のことに文句を言っている割に、自分自身は医療従事者さん達に何もしていないことを。
マスクは受け取りませんでしたが、マスクの金額分よりチョット多いくらいはその募金箱に入れておくことにしました。
医療従事者の皆様、大変な状況の中ご苦労様です。
直接お伝えすることはできませんが、感謝の気持ちは忘れていません。
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