通常ダレスと言えば、別名ドクターズバッグなどとも呼ばれ、メタルで枠取りされた開口部が大きく開き、ものがたくさん入る様にマチも大きく取られたバッグを連想します。
それに比べると、今回ご紹介するのは少しコンパクトで持ち運びしやすい、クロコダイルを使ったオシャレなダレスバッグです。
最初にこのバッグ製作のお話をいただいた際、私自身は今回はちょっと難しいのではないかと感じていました。
形状による加工工程の複雑さに加え、必要な部材が手に入らないかも知れないと心配したからです。
ところが、弊社のデザイナーと今回お願いした職人さんの惜しみない努力により、製作が実現するところとなりました。
最初のお話として、お客様は他メーカーさんの合皮でできた同型のダレスバッグを所有されていました。
サイズ的にはお気に入りだったそうです。
しかし、錠前の開け閉めやハンドル形状などご自身がもっと使いやすくしたいと思ういくつかの改善と、クロコ革での高級感を求められ、私どもで製作を受け賜わることになりました。
まず、新たにオリジナルでデザインをおこしました。
次に仮縫いモデルを作製し、通常の工程として、お客様に使い勝手をご確認いただきました。
ワニ革は斑の形がキレイなポロサスを選びました。
染色前のクラスト革で仕入れ、製作工程の途中から手染めで色付けしていく方式を取りました。
鮮やかなブルーから濃いネイビーブルーへ染め上げています。
グラデーションが立体感を醸し出し、ゴールドの金具がより一層豪華に感じられると思います。
ハンドル付け根部分の金具は一般流通の既製品ではなく、金具専門の職人が真鍮を削り出して手作りしたものです。
また、バックの両サイドの下部のツガイの金具も、このバッグ用に真鍮製のオリジナル部品を製作しました。
手前みそな話で恐縮ですが、形、色と申し分ない出来ばえになったと思います。
本来、私どもはお客様のご要望に基づき、クロコを使った一品のみのオーダーメイドバッグのメーカーです。
しかし、このダレスに関しては、ここまで作り上げるのがとても大変だったので、一つだけで終わらせてしまうのがもったいない様な気がします。
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