画像は、弊社のクロコローファー SA809です。
このローファーは、染色前のクロコ革クラストで先に靴を成形し、お客様のお好みの色に手染め染色していくという、前回ここでご案内したクロコホールカット SA808と同じカラーオーダーです。
最近ローファーがファッション誌でもよく取り上げられたりで、ちょっとしたブームの予感もあり、普段ローファーを履かない私ですが、自身用にSA809を1足購入してみました。
腰を曲げて靴ヒモを結ぶ必要がなく、サッと履いて出かけられるので、便利ではあります。
しかし、ローファーはレースアップの靴と違い、靴ヒモでキツメやユルメに結んで調整ができない分、足に合わないと大変なことが今回よく分かりました。
足の形は人によって千差万別なところに、決まった形で設計された木型から作られるローファーが誰にでもピッタリ合うかということ自体、最初から疑問のあるお話なのかも知れません。
もし購入したローファーが足に合わない場合は、無理して履かず、調整を行なうことをぜひお勧めしたいと思います。
ここからは、私のローファーを調整した経緯をご案内させていただきます。
通常、レースアップのドレス靴やスニーカーは25.5cmを履く私ですが、どういう訳かローファーだと25.0cmになりました。
前後の縦サイズはピッタリで、履いてすぐはそうでもなかったのですが、しばらくすると右足のベルトの位置の甲の骨にあたる1点が痛くなり始めたのです。
それを更に長く履いていると、痛みで歩き方にさえ支障が出る程になり、何らかの調整が必要だと実感しました。
まず、靴と足の間にクッションになるものを入れ、痛みを緩和させようと、薄めのタンパッドをベロ部の下に貼り付けました。
タンパッドを入れた当初は良い感じに思えたのですが、しばらくすると甲部が圧迫され過ぎて、あまり快適でないことに気付きます。
仕方がないので、甲のあたる部分を中心に高さ方向に革を伸ばすためのストレッチを行なうことにしました。
本来修理工房などでは柔軟剤を使う様ですが、私はストレッチさせたい部分の内側を水で濡らし、少し革を柔らかくして、自作のストレッチャーに一週間入れておきました。
靴の形が崩れるのが嫌だったので、時々ストレッチャーから出して、少しずつ様子を見ながら行ないました。
一週間後、甲部は痛くなくなる程には広がりましたが、踵に少し隙間ができるようになってしまいました。
靴内の容積が少し大きくなった分、踵側に余裕ができてしまった様なのです。
そこで、次に中敷きを入れることにしました。
まず、足全体の全敷きを入れましたが、あまりしっくりとは来ません。
前半分や踵部などといろいろ組合せて試した結果、前半分だけのクッション性のある中敷きを2枚入れ、その上に革を一枚貼ると、踵の方もピッタリ合って、良い感じになったのです。
ローファーがようやく自分の靴になった瞬間でした。
今ではレースアップ並の心地よい圧迫感があり、走っても踵は浮かず、とても快適です。
これは少し前のお話ですが、靴の販売の場でご案内したお客様から、自分にピッタリサイズの靴しか買わないと言われたことがあります。
新品で買ったものを、わざわざ中敷きやストレッチで調整するのは性に合わないとの事でした。
その方のお気持ちは良く分かります。
しかし、ローファーに限っては、ビスポークでもない限り、その木型が最初から自分の足にピッタリ合うという可能性は、あまり高くはないと思います。
また一方では、高額なブランドものを買ってしまい、足に合わないローファーを修行だとか試練だと言って、無理して履き続ける方もいらっしゃいます。
もしローファーを履きたい場合は、最も自分の足の形状に近いサイズを選び、それをうまくフィットする様に調整するまでが必要なプロセスだと、今回私は改めて学習した次第です。
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