靴を購入されるお客様が、その型紙までご覧になる機会はあまりないのではと思います。
まだ靴への関わりが薄い頃、私自身初めて靴の型紙を見て、本当にこの形を組み立てることで靴ができるのかと、内心不思議に思った記憶があります。
さて、こちらは弊社のクロコドレス靴 SA808の型紙です。
一枚つながりのホールカットですので、ベロ部以外は革から一枚で抜き取られ、その革は踵部一箇所で縫い合わされます。
何枚かの革で構成された革靴であれば、部品が分かれている分、裁断にあたっては、うまく取り都合を考え、革全体の面積をより有効に使用するため、抜き型の配置に選択を持つことができます。
しかし、ホールカットの場合、革の上にひとつの型を置いて抜くだけですので、あまり選択に余地がありません。
ワニの革の表面にはその最大の特徴である「斑」と呼ばれる鱗模様があり、革を縦方向で見て、中心に並んだ四角い斑が外側に向け少しずつ小さくなっていき、端の方では丸みを帯びてきます。
ひとつの革製品をワニ革で作る時、一番贅沢な革の採り方は、斑の中心部をその製品の真ん中にあて、左右対称の斑がやがて小さく丸くなるところまでを一枚で表現できていることです。
そういう意味では、この靴は、まず型紙がキレイに納まる適切なサイズのワニ革が選択され、片足に丸々その一枚の中心を充てています。
ご覧いただける通り、靴の中心にワニ革の左右対称が始まる一番キレイな中央部が充てられた、継ぎ目のない一枚つながりのホールカットとなっています。
結果、この採り方では1足に2枚のワニ革を使用しなければなりません。
また、クロコドレス靴 SA808の大きな特徴のひとつとして、染色前の脱色されたクラスト革で靴を成形していることが上げられます。
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