2020年8月26日水曜日

スイカの思い出

毎年夏になり、スイカが食卓に出てくると、必ずトラウマの様に思い出すことがあります。

その頃、私はまだ小学校の低学年でした。

そんなに近所でもない友達の家に遊びに行った際、その家のお母さんがスイカを出してくれました。

しかし、その出されたスイカの切り方が、異様だったのです。


丸いスイカを四分の一の船形に切り、その端から可能な限り薄く薄くそぎ落とすように切り落とされた半円の紙の様なものが何枚かお皿の上に載って出てきたのです。

友達にとっては、それが恒例の切り方だったのでしょう。

「あっ、スイカだ。」と喜んで、その薄いスイカを一枚取り、その左右の端を指でつまんで、なんの疑問もなく真ん中からシャリシャリと食べ始めました。

子供だった私は、なぜスイカがそのような切り方をされているのかが理解できず、彼のお母さんに向かってなにかの間違えでも正すように、「このスイカ薄いよ。」と言ってしまったのです。

そして、その瞬間にお母さんは気付いたのでしょう、これは外部に知られてはマズいことだったと言うのを。

最初は優しく接してくれていた彼女でしたが、そこからそのお母さんは攻撃に転じました。

「君のおウチはお金持ちやもんねー。」

初めて訪れた息子の友達が裕福かどうかなど分かるはずはないと思いつつ、彼女の言葉を不思議な気持ちで聞いていたことを、何十年経った今でも忘れられません。

そして帰りに、「絶対に人にゆーたらいかんからね。」と固く口止めされたのです。


そんなことがあったなど忘れていた私だったのですが、どうやって調べたのか、翌日その友達のお母さんは私の家を探し出し、お詫びと称し丸いスイカを一つ届けに来られました。

家庭内だけの習慣が、意図せず他人の子供に知られ、そのお母さんにとってはとても恥ずかしい思いだったのではと、しばらくした後に私は理解するのです。

何も悪いことをしたつもりはなかったので、顛末を家族に説明した後、同居していた大好きだったおばあちゃんから「いけんよー。」と叱られたことの方が、当時の私にとってはショックでした。


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